にんにく、防衛線に立つ。|うまくいかない畑への再挑戦

にんにく

イントロ

ここは、里山市民農園の西南の隅。
何を植えても、うまくいかないエリアだ。
小川側からは湿気をまとった風にまぎれて雑草の群生が、
西の林からは竹の地下茎が、静かに、時にまみれて攻めてくる。

そして――シソが一面に現れる。

シソは強力な侵略者だ。
引いても引いても、また芽を出す。
香りは好きなのに、どうにもうまく共存できない。
シソの良いところを総動員しても、敵意がまさってしまう。

タフな作物を投入

この最前線に、今年はにんにくを植えることにした。
湿り気にも寒さにも負けない、根の強い作物。
名はホワイト六片。
冬のあいだも、静かに地中で力を蓄える。

「ここを奪い返すなら、にんにくだ。」
そんな気持ちで、マルチを張った。

黒い防衛線

竹の根を掘り起こし、地表を整地。
黒マルチをぴんと張ったその瞬間、
畝がまるで“防衛線”のように見えた。

シソの根が眠る層のすぐ下、
にんにくは新たな地下ネットワークを築くことが第一の任務だ。

侵略者VSにんにく軍。
この畝での静かな戦いが、今はじまる。

このエリアでは、何度も失敗してきた。
けれど、うまくいかない場所ほど、
手を入れるたびに物語が深くなる。

黒マルチの下、見えないところで、
今日からにんにくが根を張ってゆく。
その姿が、少し勇ましく見えた。

エピローグ:ホワイト六片

北で生まれ、この山間の里にたどり着いた。
人はホワイト六片と呼ぶ。

主戦場は、餃子、ペペロンチーノ。
アジアからヨーロッパまで、範囲は広い。
寒さをくぐり抜け、熱の中で香り立つ。
それが私の生きざまだ。

マルチの穴から覗くほどの空が、
都市色に滲む。


ホワイト六片の主な特徴

ホワイト六片は、北の地で生まれたにんにく。
青森や北海道など、寒さの厳しい地域で選抜されてきた品種で、
冬の冷気にさらされることで、春にはぐっと力を出す。

名前のとおり、1玉が6片前後と粒が大きく、
皮は雪のように白く、締まりがある。
ひと粒ずつが厚みをもち、香りは強いのに、
辛さや刺激は意外とまろやか。

火を通すと甘みが増し、香ばしさが際立つ。
餃子、ステーキ、ペペロンチーノ――
どんな料理にも「主役級の香り」を残す、まさに万能型のにんにくだ。

耐寒性が高く、貯蔵性にも優れるため、
秋に植え、冬を越して、初夏に収穫するリズムがちょうどいい。
土の中でじっと力を溜めるその姿は、
静かな強さを感じさせる。

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