この記事の献立
・場所:住宅跡地(横浜)
・季節:2025年11月
・作業:ネギの土寄せ
・資材:わら
・背景:夏の猛暑に枯れかけていたネギが蘇生した記録の最終話。
あの日、私は倒れかけていた。
強すぎる陽射し、乾いた土、奪われていく水。
葉は焼け、根は痩せ、ただ生き延びることに必死だった。
市民農園から避難し、プランターで息を整え、
ポットの中で静かに根を伸ばし、
そして住宅跡地へ辿り着いた。
長かった旅路。
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風に吹かれ、土に支えられ
写真の通り、私たちはもう立っている。
弱々しかった葉先は、いまは風の中でまっすぐ。
白くよみがえった根は、新しい土をしっかりと掴んでいる。

住宅跡地の土はまだ荒れている。
それでも根は土の隙間を探し、
水は深い溝を通って静かに流れる。
ここには、ここだけの“生きる余白”がある。
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旅の終わりは、次の季節のはじまり
市民農園 → プランター → 住宅跡地。
ふり返れば、すべては枯れかけたネギの旅だった。
逃げるように離れた畑も、
ドラム缶風呂のようなポットも、
風の強い日も、夕立の音も、
すべてが私を強くした。
そして今日――
私はただ、風を受けて立っている。
何事かを待っているという訳ではないが、私は此処に立っている。
Stand By Soil.
土のそばに立つ。
土に支えられ、土を選び、土に帰る。
それがネギの、生き方だから。
季節は秋が終わり冬に向かっている。
『Reach for the moon, even if we can’t』
見上げれば染みる。ジョー、ありがとう。
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完
この物語を読んでくれたあなたへ。
生き物は、根がある限り、何度でも立ち上がれる。
ネギも、人もきっと同じ。
To Be Continued — 次の季節へ
けれど、この旅はまだ終わらない。
土に根を沈めた私たちは、ここで冬を越え、静かに春を待つ。
冷たい風に揺られながら、土の奥で小さな力をためていく。
そして――来年の3月から4月。
また新しい命が、この場所で芽吹く。
あの頃、まだ種だった私がそうだったように、
次の世代が土に触れ、光に向かって伸びはじめる。
季節は巡り、畑は続く。
物語もまた、ここから続いていく。
To be continued.

