春
今年のさつま芋は、友人に教わった方法で「芽出し」から始めています。
種芋を土に伏せてしばらく待つと、紫がかったツルが元気に伸びてきました。
この芽たちは、やがて畑に植える「さし穂」になります。一本の芋からたくさんの命が生まれ、また次の芋へとつながっていく――そんな循環の中に自分もいることを感じます。
農薬や肥料に頼らず、自然のリズムにゆだねながら育てるこのやり方は、手間はかかるけれど、持続可能で、なにより気持ちがいい。
芋の芽がぐんと伸びるたび、土とつながっている実感が湧いてきます。
夏
やがて初夏を過ぎるころには、畑のさつま芋のツルはぐんぐんと勢いを増し、土の上を覆うように生い茂っていきます。濃い緑の葉が風に揺れ、陽射しをやわらげる天然のカーテンのように広がる様子は、見ていて清々しいものです。
さらに、盟友バターナッツとの共演によって、畑は乾きすぎず、雑草の繁茂も抑えられました。互いの存在が支え合うようにして、畑全体がひとつの調和した景色となっていくのです。
その繁り方は力強く、ひとつひとつの芽が夏のエネルギーを受けとめながら、地面の下へと養分を送り込んでいることを感じさせます。日々成長していくツルを眺めていると、「畑の時間は確かに前へ進んでいる」と実感でき、土と共に暮らす喜びが胸に満ちていきます。
季節は9月。青々と茂ったツルの下では、きっとさつま芋が静かに肥りはじめているはずです。まだ土の中をのぞくことはできませんが、葉の勢いを見ていると、秋の収穫への期待が自然とふくらんでいきます。
さつま芋は「畑で一番退屈な野菜」と言われることがあります。ツルばかりが広がって、地上では変化が見えにくいからでしょう。しかし、この退屈さの裏には、他の野菜では味わえない大きな振れ幅の感動が隠れています。
収穫の日、スコップを差し入れて土を持ち上げると、そこから現れる芋の姿――大小さまざまな形が土の香りとともに現れる瞬間は、静かに積み重ねてきた時間が一気に報われるようです。芽出しから始まった小さな営みが、ここでひとつの実りとして形になる。その驚きと喜びは、決して退屈などではなく、むしろ「静かな興奮」と呼ぶにふさわしいものだと感じます。
定番・安納芋
さつま芋といえば色々な品種がありますが、我が家で毎年欠かさず育てているのが「安納芋(あんのういも)」です。鹿児島県・種子島生まれの品種で、濃厚な甘さとねっとりした食感から“蜜芋”という言葉にひかれて選びました。(記憶)
切ると中身はオレンジ色で、焼き上げると水分を含んでとろりと溶けるような口あたり。糖度は加熱すると40度近くまで上がると言われ、まるでスイーツのような味わいになります。小ぶりながらも旨みがぎゅっと詰まっており、焼き芋にすると格別。冷めても甘さが残るので、おやつやスイートポテトにもぴったりです。(ばらつきはあります)
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